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ねこにゃん大決戦

「――と言うわけで、これより第一回ねこにゃん頂上決戦を行います!」

拳を高く突き上げながら、八雲藍は宣言した。

「あの、どういうわけなのでしょうか」

傍らの古明地さとりが突っ込む。

「皆さん準備はOKですかー!?」
「あの……」
「ねこにゃんは好きかー!?」
「話を……」

しかし、藍は完璧なまでのスルーを決め込む。……たださとりの言葉が耳に入っていないだけなのだが。

「……くすん」

そうとも知らないさとりはすねてしまった。

「では選手紹介!赤コーナー、古明地さとり・火焔猫燐ペアー!」

名前を呼ばれた二人、お燐は余裕の笑顔を見せ、さとりは親の仇のように藍を見つめていた。

「……こうなれば心の声を…………橙にお燐ちゃん可愛いよはぁはぁ……」
(煩悩の塊でしたか……八雲藍、噂に違わぬ変態ですね)

さとりはバカらしくなったので諦めた。ため息を一つ。

「さとり様、どうかしました?」

お燐が声を掛けてくる。

「なんでもないわ」
「続いてー、お待ちかねの青コーナー!私八雲藍・橙ペアー!」

辺りが闇に包まれ、どこからかスポットライトが差し込み橙を照らす。

「これで美味しいものが食べられるのかー」

スポットライトを動かしながらルーミアが呟く。腕には『アルバイト』と書かれた腕章を付けている。
ちなみに、その傍らには『報道』の腕章をつけた射命丸文がカメラを構えていた。
橙は突然のことにビクッと体をはねらせて驚いたが、困っているとも照れているともとれる微笑みを浮かべた。

「可愛い、はぁはぁ…………うっ…………失礼しました。そして最後は審査員の紹介です。我等が主、八雲紫。歩く核兵器、霊烏路空。通りすg……楽園の負け組巫女、博麗霊夢の三人

でお送りします」
「誰が負け組よ!……そりゃ、確かに早苗のとこよりは……ブツブツ」

霊夢の突っ込みと呟きを無視して、藍は進行を続けた。

「……で、これはどういうこと?」

霊夢は隣の紫に尋ねた。

「どうって言われても……見ての通りよ。藍がどうしてもって言うから」

紫は苦笑するしかなった。

「はぁ? 意味がわからないんだけど」
「私もね、たまに藍のことがわからなくなるのよ……」

遠い目をしながら呟く紫の姿に、流石の霊夢も何も言えなくなってしまった。
そんな審査員席の二人をよそに、藍のボルテージはなおも高まっていく。

「ルールは簡単。お互いのねこにゃんについて語り合うだけというシンプルなもので、最終的に審査員の票が多かった方の勝ち! それでは……ファイッ!」

ルーミアがゴングを鳴らす。

かくして、闘いの幕が上がった――。

「……この勝負、紫様や空さんはそれぞれの陣営に入れるだろうから、巫女の心を動かした方が瀟洒……いや、勝者となる……ですか、意外に冷静ですね」

さとりが藍の心を読む。始まったからにはやるしかない、とさとりは覚悟を決めた。

「先手必勝でいかせていただく。うちの橙はとってもいい子でね、私の言い付けは何だって聞いてくれるし、進んで手伝いだってしてくれるんだ」

藍の言葉に橙は照れて笑った。

「お燐だってそれくらいはしてくれます。というか、お燐は自分のことをほぼ一人でできます。既に自立できるレベルと言っていいでしょう」

燐がない胸を張る。さとりに褒められて嬉しいようだ。

「むむっ、なら、橙と私は大の仲良しだ。暇さえあれば橙は私の元へ来るし、私はひざ枕をしたり本を読んでやったりする。買い物に行くときは手を繋いで行くものだ」
「仲良し……困りましたね」

さとりはそう呟いて黙ってしまった。
藍のように日頃、自分からスキンシップのようなものはとっていない。自分の気持ちを素直に燐達に伝えたことがなく、燐達は果たして自分のことをどう思っているのか。
この闘い自体は馬鹿らしいものだが、主としてのこの現状に、さとりは落ち込んでしまった。
黙ってしまったさとりを助けるべく、燐が

「あ、あたい達だって一緒にお風呂入ったり、一緒に寝ることだってあるよ」

と助け舟を出した。さとりが顔を上げると、燐は優しく微笑む。

(さとり様はあたい達を拾ってよくしてくれた、あたい達はそんなさとり様が大好きです……ですか。ふふっ、杞憂だったようですね)

さとりは、燐の優しさに感謝した。ふと空の方を見ると、空もまた、さとりに笑顔を見せた。何も考えていなかったが。
しかし、この一言がこの後の騒ぎを引き起こすことを、誰も知らない。

「い、一緒にお風呂……」

そう呟き、体を小刻みに震わせる藍。
何かのスイッチが入ってしまったようだ――のちにその場にいた文はそう語った。

「一緒にお風呂……結構。だったら私達は洗いっこしあってるし、お互いの体で知らない部分はない!」

突然のカミングアウトに、霊夢は呑んでいたお茶を盛大に吹き出した。
霊夢以外は、口を開けてポカンとしている。橙だけは、誰よりも早く藍の言葉を理解して顔を真っ赤にしていた。
そして、藍の暴走が始まる。

「橙と私は夜な夜な布団の中で(ピー)、お風呂で(ピー)、しているんだ!」

ピー音連発で語りだす藍。ちなみにこのピー音は音響担当のミスティアが口でいれていたりする。
生なのでずれることもあるが、そこは職人。プライバシーはしっかり守る。

「橙の胸は(ピーーー)、で触れると口がだらしなく開いてしまうんだ。でも下の口、もとい(ピーー)は(ピーー)で――」

誰も動くことができなかった。……あまりのくだらなさに。
赤裸々に語られる性生活。橙は穴があったら入りたいとかそういうレベルの問題ではなかった。
ちなみにこの場合の穴というのは(ピーーー)ではない。
しかし、一番の被害者はさとりであった。
藍が話す言葉と心の声というステレオで聞かされる。しかも、心の声は口に出すものよりもディープなものばかり。
臆面もなく恥ずかしい台詞やピーが入ってもおかしくない言葉を連発、その羅列が押し寄せる津波のごとくさとりを襲う。
心の声にはピー音がない。さすがの職人もそこまではカバーできない。
よって、耳を塞いでしゃがみ込む橙以上に、さとりは顔を真っ赤にしていった。
人の妄想を読んでしまい、赤面することはたまにあるが、今はその度を超えていた。
暴走する藍は、何故か「テンションあがってきたぜー!」と叫ぶと、服を脱ぎ捨てた。
ここではさすがに紫が止めに入るが、「なんで裸が悪いんだ!」と暴れる始末。
もはや誰も藍を止めることはできない、誰もがそう思ったが――

「ら……藍様のばかー!!」

そう叫ぶや、様々な恥ずかしさに耐えられなくなった橙が走り去って行った。

「あ、ちぇ、ちぇぇぇぇん!」

これには藍も我に返り、慌てて橙の後を追った。
残された面々は、当然のようにどうしていいかわからず、互いに顔を見合わせるばかりである。

「……帰りましょうか」

さとりの言葉を皮切りに、一人、また一人とその場を去っていく。
審査員席に、満場一致で赤の札が挙げられていた。

「……美味しいものはどうなるのかー?」

残されたルーミアの呟きだけが、無情に響くだけである。
後に、この騒ぎが新聞沙汰になり、藍が謹慎を喰らったのは言うまでもない。


あとがき

面白い話って難しい(´・ω・)

二人のねこにゃんを対決させるというか、藍様のぶっとびっぷりを書いてみたくて書いてみた

なんか当初のイメージと違うけどある程度勢いに任せて書けたので満足…かな?

もうちょっとさとりん・お燐を動かしたかったです